中華特小 T38系 分解&測定レポート

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今回のネタはコレ

アマゾンなどで売られている特定小電力トランシーバ T38系
系としているのは、同じ技適番号で複数の型番が登録されているから。兄弟機と思われるのは、
・T48
・T18
・T668
・T899
・T2
・T3801
中身は一緒で、筐体が異なるんじゃないかと推測。

お値段も、2台で3,000~4,000円でリーズナブルな割に”よく飛ぶ”と言う代物。

技適番号のチェック
210-134033 となっている。

総務省のHPで検索すると、GLOBAL MEI CHUANGと言う香港の会社が、アメリカのMiCOM Labsと言う認証機関で、2019/10/23に工事設計認証を取っている。

この、GLOBAL MEI CHUANG社、すでにhpへアクセスできなくなっていて、色々調べても社名が変わったとか、倒産したとかの情報もなく今どうなっているのかわからない。
http://www.globalmeichuang.com

何だか、雲行きの怪しいスタートになりましたが、分解していきましょう。・・・ネジ4本で止まっているんだけど、全て(+)ネジ。
特小って家庭用工具で開けられない構造にする必要があったんじゃ?

カパッと、分解。
1chip送受信ICとマイコン、その他周辺回路で出来ています。シンプルで低コストなのもうなずけます。元々は、もっと高出力であった無線機をデチューンして(出力を下げて)、日本向けにしたと思われ、SOT89のパターン(ファイナルが実装されると思われる)を、0Ωにチップ抵抗でバイパスしてある。

1chip送受信ICは、BEKEN社のBK4818を使用。周辺には基準クロックとかオーディオインターフェイスや送受信切り替え回路などの周辺回路だけで、基本的な所はすべてこのICが担っている。

ここで、気になる点が。

何かと言うと、総務省に提出されている申請書類の分解写真と異なります。ぱっと見、違うと判るのは1chip送受信ICやマイコンが異なる。これは、工事設計認証と考えるとおかしく、同一なものとみなされないと推測されます。通常、部品変更などの変更が有った場合は、認証取り直しで

技適番号が変わる

はずです。なので、今回の供試体は偽物と言う事になります。

出典:総務省,技術基準適合証明等を受けた機器の検索,
https://www.tele.soumu.go.jp/giteki/SearchServlet2?PageID=jt01&ATF=31420003

基板の状態で偽物判定となってしまい、この個体は、技適の通っていない無線機と言う事になります orz

ここで終了でも良いのですが、偽技適が貼られて売られているので分らず使っている人が居る可能性もあります。特に”飛びすぎ”との話も聞くので、コレがどの程度の物なのか測定したいと思います。

アンテナの取り付け部を見ると、アンテナとその横にGND端子があることから、ここが試験点ではないかと推測。同軸ケーブルを半田付けし測定器へとつなぎます。

みんなが最も気になるパワーを測るのはコレ。
hp(現keysight)のパワーメータ437Bと、パワーセンサ8482H。センサは特小の10mWと言うパワーレンジから8482Aの方が妥当だとも考えられるが、技適を偽装するような無線機なので、異常な高出力によりセンサを焼損させたら泣くに泣けません。そのため、3Wまで耐えられる8482Hを選択しました。(8482Aは100mWまで)

供試体とセンサはこの様に接続。供試体には標準電圧である4.5Vを供給し、ch1・11・20の3波で測定を行う。

パワー測定・・・

ch1:26.26mW
ch11:26.21mW
ch20:26.25mW
法規は10mW+20%-50%なので、

NGです。

ただ、4dB upなので爆飛びってほどではないでしょうね。

技適とは関係ありませんが、通信距離に関係する受信感度も測ってみました。
ch1:-118.7dBm
ch11:-119.1dBm
ch20:-118.9dBm
(12dB SINAD)
1chip送受信ICと考えると、とても高感度。
技適の資料からアンテナゲインは、1.56dBiとなっていました。

今回は、無作為に手に入れた1台がパチもんで規格も満足できないと言う面白い結果となりました。元々、試験を受けた会社の存在もよくわからなくなっていて、ぱっと見では流通している物が本物なのか見分けは付かないと思います。また、コピー品や規格外れ品も混ざっているかもしれません。安心して使うには、国内メーカの物を正規の代理店(無線機屋)などで買うのが良いかもしれませんね。

230711追記
このトランシーバを送受で使ったとし、どの程度の距離到達するのか簡単に計算してみましょう。
送信電力=14dBm (実測値)
受信感度=-119dBm (実測値)
アンテナGAIN=1.56dBi (技適資料より)
*基板が偽物であるためアンテナも本物と同等かは分からないが、アイソトロピックANT以上、ダイポールANT以下と考えると妥当な値ではないかと思う。
14(送信電力)+3.12(ANT x2)+119(受信感度)=136dB(通信品質が保てる最大空間損失)
空間損失(真空自由空間)は、20log(4πr/λ)
周波数を422MHzとしてr=350kmが臨界距離になります。
実際は、空気があったり地面があったり、雑音が悪影響を及ぼしたりで理論値にはとどかないと思われます。*ただし、ラジオダクトの発生など異常伝搬があった場合には、この限りではありません。
もし、この機種の送信出力が10mWだった時の最大空間損失は、4dBダウンの132dBまでで、臨界距離は220km程度になります。

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